「ふりまわされない
~小池一夫の心をラクにする300の言葉~」
ふらりと入った本屋で、私はこの本と出会いました。
その時は仕事を辞めたばかりで、情緒もなんだか落ち着かない日々。
何かに導かれるように、たまたま目に入ったのが、小池一夫先生の本です。
あてもなくパラパラとページをめくると、はっと気づかされる一言が現れ、悩んでいたことが解かれていく感じがしました。
80年生きた経験から紡がれる言葉たち

優しい言葉はもちろん、耳の痛くなる言葉やギクッとするような言葉もあって。
説教臭くもなくて、すーっと自然に心に入ってきます。
なんでこんなに心に響くんだろうな?と考えてみたのですが。
この本は、当時80歳の小池先生が「人生の先輩としてのつぶやき」を書いているだけなんです。
決して価値感を押しつけたり、読者を変えてやろうという野心などありません。
著者の長い人生経験に基づく実感だからこそ、言葉に重みが生まれるのでしょう。
難しい心理学や自己啓発本を読むより、よっぽど心に響くなあと私は思います。
Twitterから生まれた言葉のサプリメント

この本は、小池先生のTwitterを書籍化したものです。
そう、なんと小池先生は73歳の時にTwitterを始められたのです。
日々つぶやかれる、厳しくも愛のある言葉が話題となり、今では年齢性別を問わずフォロワーが80万人を超えるほど支持されます。
あまりにも反響が大きいので、このたびの書籍化が実現されたのです。
80歳を超えてなおTwitterで発信し続ける小池先生の熱意に、ただただ頭が下がる思いです。
小池先生がTwitterをされていると知り、私もさっそくのぞいてみたんですね。
すると真面目なつぶやきかと思いきや、大体はユーモアあふれる軽口が多くて(笑)
奥様(家人と呼んでいらっしゃいます)の話や、つまらなかったドラマの話、入院中の同室のおばさまの話など。
思わずクスリと笑ってしまうような、ブラックなつぶやきも多くて。
人間くさい文章が良いなあと、私もハマってしまいました。
そんな中、たまに織りなされる珠玉のつぶやきが、また名作で。
140字に先生の思いが凝縮されていて、心に染みます。
文字数が制限されているTwitterで、ここまで人の心を惹きつける文章を過不足なく表現できるなんて。
ただただ感嘆するばかりです。
豊富な人生経験から生まれる金言

小池先生は漫画(劇画)原作者ですが、それまでに様々な職種を経験してこられました。
農林水産省の役人をドロップアウトし、賭博打ちとして生計を凌いでいた時期もあります。
山あり谷ありの振り幅の大きい人生を歩んでこられたからこそ、物事を見つめる視野が広いんだなと思いました。
ご自分の人生経験から生まれた数々の金言。
これからももっと目にできるはず・・・。
そう思ったのですが、実は小池先生は2019年に82歳でお亡くなりになられました。
これからは新しいツイートも更新されないし、もうあのユーモアあるつぶやきが見られません。
なんだかとても悲しくなりますが、遺された言葉たちがここにあります。
私は小池先生の本を何度も読み返していて、言葉を体に染みこませています。
行き詰まったときに、なんとなく手に取って開いてしまう本です。
ご縁と運とタイミングで、小池先生の言葉が必要な方の元に届きますように。